「悪魔のささやき」加賀乙彦 著
元精神科医といて東京拘置所で凶悪犯罪者の心理状態に向き合ってきた加賀乙彦氏が記した「悪魔のささやき」を読みました。
この本は、殺人などの凶悪犯罪で死刑が確定した多くの犯罪者が「なぜ自分が人を殺してしまったのか分からない」「気が付いたら罪を犯していた」など無意識のうちに犯罪を犯してしまったという現実がある。犯罪を犯す直前に自分の背中を押す「悪魔のささやき」としか言いようのない何かがあったと語る犯罪者達とのやりとりから始まります。
自殺に関しても同様で、自殺に失敗し治療を受けている患者の多くは「助かってよかった」「なぜ飛び降りたのか分からないけど、何かに背中を押され気が付いたら...」といったことを話していると言います。
僕は鬱病を患った経験があり、その中で死ぬことを毎日考えていた過去がありました。
そして自殺未遂をしています。
その時の感情と自殺で助かった方の言葉がきれいに重なり、かなりの恐怖を感じました。
確かに僕自身、なぜ死のうとしたのか記憶があいまいではっきりと覚えていませんし、死ななくてよかったと心から思っています。
また加賀氏はこの後に、自殺への気持ちが他殺へ変わることがあるという内容も記していました。
もし鬱病当時、自殺でなく他殺へ悪魔がささやいていたら...そう思うだけで怖くてたまりませんでした。
そして加賀氏は今の日本は、「悪魔のささやき」に弱い国であり現在たびたび起こっている凶悪犯罪はこれによるものだという考察を述べています。
鬼畜米英などと敵国を呼称し天皇陛下に命を捧げた戦時中から、敗戦後アメリカを称え平和を志す日本人。
「みんながやってることだから」といい自分も同じことを行う現代の日本人。
日本人は昔から周りの状況に自分をゆだねてきた、いわゆる個がない人々のあつまりであるといっています。
そんな個がない人々の住む社会が今は子供から大人まで自由な時間のない刑務所のような社会になってきている。
このような日本の現状が「悪魔のささやき」よって日頃の鬱積が凶悪犯罪へとつながると述べています。
では「悪魔のささやき」から身を守るためにはどうすればよいのか。
長年精神科医という仕事をし現在は作家として活動する著者が、防衛策をのべてくれています。
凶悪犯罪を犯す人の心理や、現代の自殺問題や子供による殺傷事件などについて知りたい方は是非読まれることをお勧めします。