『プラネテス』 幸村誠 著
プラネテス1~4巻
ぼくが大好きな宇宙漫画です。
しかし話の本質は宇宙ではありません。
1. あらすじ
舞台は人間が宇宙に進出した2075-2080年が舞台です。
主な登場人物は同じ宇宙船で宇宙ゴミ(デブリ)回収を生業とする4人
自身の宇宙船を持ちたいと願う主人公ハチマキこと八郎太
博愛主義で愛を語るタナベ
高高度旅客機の事故で妻を亡くしたユーリ
主夫として働く夫と動物大好きな子を持つフィー
ハチマキは自身の宇宙船をもち、太陽系を回りたいという大きな夢を持っており「宇宙飛行士は孤独に生き孤独に死ぬ」という考えを持っていました。
しかし宇宙船を手に入れる為には現在のデブリ回収業では資金も実績も足りないという現状がありました。
そんなところに人類史上初めての木星資源探索のためのクルー応募があり実績をつける為に挑戦します。
クルーになる為の厳しい試験の中、ハチマキは自分の目標を叶えること以外に無関心になってしまいます。
宇宙資源開発に反対する宇宙防衛戦線のテロにより多くの人がなくなってもお構いなし。
そんなハチマキに「愛がない」と怒り突っかかるタナベ。
隣人愛やご縁を大切に考えるタナベにとってハチマキは許すことのできない存在でした。
そんなタナベをはじめとするデブリ回収業の同僚や家族の影響でハチマキの考え方はどんどん変化していきます。
宇宙が舞台の話ではありますが、人間とはなにか?愛とはなにか?など哲学的なことや人間ドラマが主軸になる漫画です。
2. 感想
一流の宇宙飛行士は最後まで孤独であると考え、目標を達成しようと懸命に努力するうちに自分のこと以外どうでもよいと感じる、物語序盤のハチマキが大学受験時の自分と重なりました。
ハチマキと同じく、当時の自分も合格することに必死で友人や家族のことも考えず、今自分がいる場所に納得いかずただがむしゃらに上だけをみていました。
高みを目指そうと努力する時、人間は視野が狭くなり周りの繋がりとか現状への感謝や楽しさが見えなくなってしまうことは仕方ないのかもしれません。
この漫画はそんな過去に目を向ける事もできますし、これから何かに熱中した時に周りへの感謝や愛について忘れないようにしようという教訓も与えてくれる内容になっているなと思いました。
考え方次第で自分を取り巻く環境は魅力的なものになるという事や
アドラー心理学の共同体感覚のように、自分たちは一人ではないと訴えるシーン
嫌な過去も自分の考え方次第で良い意味を持つという事
当たり前のようでなかなか気づくことのできない事が沢山盛り込まれている作品となっています。
3. 最後に
僕はこの漫画を16歳の時に初めて読みましたが、恥ずかしながらあまり面白く感じませんでした。
実家に帰った時になんとなく読み返してみると本当に面白く一気に読んでしまいました。
人生のステージが上がるにつれ得られるものが多くなる作品だと感じました。
プラネテスを以前読んで難しいと感じた方もまた読んでほしいなと思います。
自分もまた数年後にもう一度読んでみたいと思います。
読み返すたびに「当時はこの場面でこう考えたけど...」と過去の自分の考えと今の考えを比較できる作品となっていると思います。
注意としては
宇宙漫画でありますが、宇宙飛行士や宇宙工学などに詳しく触れているわけではなく
宇宙に進出した人間のドラマを描いている作品です。
人間は宇宙に進出しても、地球で生活する今と人としての本質は変わらないのかもしれない。
そこに美しさや優しさがあるそんな作品です。